甘い脅迫生活




「失礼いたします。お連れ様がお付きです。」



ホテルの人のその一言に、漸く伯父さんが破顔する。


「おお!ようやく着いたか!通しなさい。」

「かしこまりました。」



上機嫌の伯父さんがドアの前まで歩いて行って、姿を現した女性に笑顔を向けた。


あ、この人、知ってる。



「おじさま。」

「わざわざ来ていただいてすまないね、小竹くん。」



凛とした佇まい。隙の一切ないスーツ姿は、彼女の短く切りそろえられた綺麗な黒髪とマッチしていた。尖った目は猫のようで、ばっちり化粧をしているのになぜかキツイ印象を与えない。


それも、彼女が醸し出す空気のせいだろうか。


女性なのに西園寺フードの専務まで上り詰めるほどの人だから、とてもツンツンした強気の女性を想像したけれど。伯父さんに笑いかけるこの人からはとげとげしさなんて一切感じない。



失礼かもしれないけどとても、可愛らしい人に見えた。



この人が、優雨の元カノか。


やっぱり広報誌なんかと違って、実際に見るとド迫力だ。




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