甘い脅迫生活
「伯父様、これはいったい、」
小竹さんは私たちを見て、戸惑っているようだ。もしかして、今日何をするのか知らされないで呼ばれた?そうだとしたらそりゃびっくりするだろう。
「いやぁ、なぜか勘違いした輩が優雨の金に飛びついてきていてな。現実を見せてやろうと呼んだんだ。うちの優雨には、決まった方がいるんだ、とね。」
「っっ、」
思わず息を呑んで優雨を見れば、何を考えているのか、笑ってワインを飲んでいる。
お母さんも同じく。突然現れた小竹専務と伯父さん夫婦をいないものとみなしているかのようだ。そんなスペシャルスキルをもちろん持ち合わせていないのは、私とお父さん。
「え?え、え?」
戸惑い全開でキョロキョロしているお父さんは、説明を求むとばかりにお母さんに縋るような目を向けていた。
「それは、どういう意味でしょう?」
「こいつらが優雨を騙して金をせしめようとしているんだ。結婚を振りかざしてな。」
伯父さんが胸を張って得意げに言うものだから、怒りを突き通して呆れてしまう。いつ私が結婚を振りかざしてお金を巻き上げたんだ?
婚姻届けなんて騙してどうなるものでもないのに。嘘を言うにしてもあまりにも無理矢理な話過ぎて、もはや笑えるレベルだ。
「結婚?」
小竹専務の視線が、優雨を見て、私へと移ろう。その綺麗な瞳にまっすぐに見られると、なんだか言いようのない圧を感じてしまう。
美人って、本当に、迫力がある。