甘い脅迫生活
場を乱したかったのか、それとも本心で専務と優雨を結婚させたいのかは分からないけど、伯父さんの作戦は明らかに失敗と言わざるを得ない。
「美味しー!」
伯父さんの食事をものすごく美味しそうに食べている専務を茫然と見ている伯父さん。
私が声優で、伯父さんの吹き替えをするとすると、
「なにこれ?」
だ。
ほんとに、私もそう思います。
「さて。」
もはや、伯父さんが放った刺客は戦闘不能のようで。茫然とする伯父さん夫婦を前に、お母さんがナフキンを机の上に置いた。
「デザートを食べたいところですが、あいにく気分がすぐれません。私としては一つだけ、この場で確認して帰らせていただきたいのですが?」
ニヤリと笑ったお母さんの顔は、それはそれは怒っていらっしゃって。おかしいな?顔は笑ってるのにな?
お母さんの機嫌にお父さんはきちんと気付いていて、おお、怯えていらっしゃる。
こんなに不機嫌なのはなんだろ。ものすごく久しぶりなんですけれども。
固まる私たち親子を他所に、お母さんの視線の先の優雨は優雅に余裕の笑顔を放った。
「どうぞ。なんでも聞いてください。」
気付いていないはずもないのに、お母さんの権幕を前に堂々とできるところはさすが、西園寺フードの社長をやっていることだけはある。