甘い脅迫生活





見つめ合う笑顔と笑顔。なのに部屋の空気がピリついている。それを固唾をのんで見守る伯父さん夫婦を含む私たち。ハイペースで食べ続けている専務は除く。



何をおっぱじめるのか、全員がそう思っているに違いない。



「貴方は、うちの娘を必ず幸せにできます?」



なのに、お母さんが質問したことは、娘を持つ母親としては至極まっとうな質問だった。



なんとなく、肩透かしを食らった気分な私。だけどお母さんが、私を大切に思ってくれている証拠だから。なんかすごく、ほっこりした。


いやなんか、お母さんもお母さんなんだなぁ、なんて。照れちゃうなー。


だけど頬が緩む私とは違い、質問された方の優雨の顔は真剣そのもので、なんとなく雰囲気が重たい。


……もしかして、自信ない、とか?


だって脅迫結婚だし。



私としてはここで無理ですって言ってもらっても構わないはずなのに、正直、言って欲しいと望んでいる自分がいた。


「もちろん、幸せにします。」


そう、その言葉を。

「っっ、は、はぁぁぁ、」



誰にも聞こえないように、深く、深い、ため息を吐いた。


チラリと周りを見るけど、誰も気付いてないみたい。よかった。




< 132 / 185 >

この作品をシェア

pagetop