甘い脅迫生活
「ゆう。」
見上げれば、優雨が笑っていた。もごもご名前を呼ぶと、手をそっと外して私の隣に座る。
「ごめんね。こんなことになって。」
そう言いながらも優雨はなんだか満足そうに見える。なぜだろう?首を傾げていると、最後のデザートが運ばれてきた。
「あ、美味しそー。」
手を叩いてはしゃぐ専務は、伯父さんのデザートを自分のところに運ぶように言っている。行動だけ見たら結構図々しいのに。なぜかこの人がやるとそんな感じは一切ない。
「今日はありがとうございました。」
目の前に運ばれたイチゴのムースにくぎ付けになっていると、優雨が誰かにそう言った。目を向けてみればそれは、さっきから居るのか居ないのか分からなかった伯父さん夫婦だ。
なんだか違和感を覚えていた。
伯母さんは必要以上に話さない。初めは私たち家族みたいな下民と話したくないとかそんな高飛車な理由だと思ったけど、どうもそうは見えない。
そして伯父さん。専務を呼び出すなんて大胆なことをして、うちの家族に暴言は吐いたけど、なんとなく全て何か見えない何かに線引きしているような、そんな感覚だった。
要するに、”手ぬるい”んだ。