甘い脅迫生活
「俺はっ、認めない。」
そう言った伯父さんは私を睨みつける。血走った眼は今にも私を殺しそうなほどだ。
なのに。申し訳ないけど。
私にはそんな睨み、聞きはしない。
昔から、怖いという感覚に鈍いところがあった。
親の会社が倒産して、食べる物にも困っていた時期も、借金まみれで将来が見えない時も、優雨との結婚も、そして今も。
私はどこか、全てを客観的に見れていた。
前向きとか、鈍さとは違うと思う。ある意味長所と言えばそうなんだけど。
「認めていただかなくて、大変結構です。」
「っっ、」
だけどなぜだろう?
優雨が怖い声を出すだけで、優雨が心底冷たい表情で伯父さんを見ているのを見ただけで、ゾワリと恐怖が身体を包む。
「俺が愛している妻なんです。そこには誰の意見も入らない。当たり前でしょう?俺が、美織を欲してるんだから。」
絶対的な王様。冷酷なサディスト。
会社のためなら自分を育てた身内を蹴落としてでも這い上がる、そんな男が、唯一私に甘い顔をする。
嬉しくないわけがない。
優雨の存在は、得体が知れなくて、訳が分からない。
私はどこか知らない所で、この人に何かしたのだろうか?
「誰がなんと言おうと、美織は俺の妻です。」
この人がここまで執着するほどの、何かを。