甘い脅迫生活
美織
「今日は形式として、お呼びしただけです。用は済みました。ご苦労様でした。」
茫然とする伯父さん夫婦を置いて、優雨は私の手を引いて歩き出す。
「小竹も、食べたら仕事に戻れよ?」
「はいはーい。」
青白い顔をした伯父さん夫婦を他所に、ウキウキ顔の専務も部屋に置いて。
私なら、ものすごく気まずいのに。やっぱりあの人なんか変。
優雨の元カノじゃないことは判明してホッとしてるけど、なんだかモヤモヤする。
快活な軽さ。可愛らしい上に仕事もできる。そんな魅力的な人が自分の右腕というんだから……優雨も好きにならないわけが、ないよね。
しかもなんだか2人とも仲が良いし。プライベートでも知り合いっぽいし。
なんだろ、なんだかモヤモヤする。
「デザート、食べにいく?」
「へ?」
気が付けば、私たちはホテルの最上階にあるラウンジスペースにいた。優雨の指を指す先には、デザートブッフェの文字が。
「ふふっ、そんなに食べられないよ。」
「……。」
思わず噴き出した私を見たまま、優雨が驚いたように目を見開いていて。
「優雨?」
「ん?あ、ああ。」
戸惑った様子で視線を逸らされた。なんとなく、耳も赤いし。どうしたんだろう?