甘い脅迫生活
過去
「美織、ちょっといいかな?」
「ん?」
今日は土曜日。珍しく休みの優雨が、遅い朝を迎えて、昼食を作る私を寝ぼけ眼でソファーへと呼ぶ。とろんと微睡む色素の薄い目は潤んで、儚い笑顔は縋るように私を見上げている。
うう、朝から無駄にイケメン。そして色気がいつもよりマシマシ。
頬を引くつかせる私を他所に、優雨の手が私の手を引く。
少し、熱い。寝起きだから優雨の体温が高いのかも。
「隣、座って?」
「……。」
ボサボサの髪で首をコテンと傾げられると、とりあえず座ってしまう自分がいる。なによその寝ぐせ。あざとい。
可愛いじゃない。冷酷王様のくせに。
「話が、あるんだ。」
「どんな、話でしょう?」
寝起きのせいでまだ言葉が拙いけど、今からする話が真剣な話だということは、なんとなく分かった。
潤んでいた寝起きの目は、スイッチが切り替わったように、鋭利に私をまっすぐに見つめる。
ゴクリと、喉が鳴る。
「そろそろ、大々的に自慢しようと思う。」
「……へ?」
首を傾げた私に、優雨はキラキラの笑顔で微笑んで。
「俺の妻を、正式にじま、いや、公表しよう。」
相変わらずの不思議発言をしだしてしまった。