甘い脅迫生活
「え、自慢?」
「うん、自慢。」
”うん”て。そんなふにゃりとしたゆるゆるの笑顔で言われちゃうと何も言えないじゃないの。
絶句する私を他所に、まだ半分寝ぼけているらしい優雨は気だるげに髪をかき上げた。
う゛、色気が半端ない。少し乱れたパジャマの胸元から見える肌が妙に艶めかしい。
私の視線に気付くと、優雨は嬉しそうに笑って。
「まず会社で結婚発表のパーティーをする。」
「へ?」
なんだかとんでもないことを言い出した。
「その後、会社関係の人を招いてのパーティーで美織を紹介する。」
「は。」
「それから、俺がお世話になっている人を招いての食事会。」
「ほぉ、」
「その後マスコミに正式発表する。」
「へぇ。」
なんだかボーッとしてきた私を見て、優雨はにやりと口角を上げる。
「そうしたらもう、美織は逃げられない。」
「っっ、」
突然鋭くなる視線は、逃がさないとばかりに私の全身に絡みつく。
「美織。」
ゆっくりと、優雨の指先が私の頬を伝って、後頭部に到達したそれは、やんわりと私の顔を引き寄せる。
少しずつ近付いてくる、優雨の綺麗な顔。
ああ、まつ毛長いな、なんて。優しい優雨の笑顔をうっとりと見ているとなぜか私は……。
目を、閉じていた。