甘い脅迫生活
「……へ?」
目の前には、スーパーイケメンの社長が跪いていて、私の手の甲にキスを落としている。
茫然と山田さんを見れば、なぜか彼は音が出ないように拍手を繰り返していた。
なにこの状況。
何か言葉を返さなくちゃとは思うのに、あまりにも突拍子もない状況に何も考えられず。
ようやく口から出た言葉は。
「あの、社長、大丈夫ですか?」
明らかに社長の頭を疑っているものだった。
しばらく俯いている社長。やっぱり恥ずかしかったのかな?
冗談でやってみたのはいいけど、スベった。みたいな?それならかなり気の毒だ。
でも私は初対面だし。なんならそこの山田さんにでもした方がウケてくれると思うんだけど……
「無理か。」
「え?」
社長の溜息交じりの声に首を傾げた。
「おかしいな。漫画では頬を染めて目をキラキラさせていたぞ。」
「そりゃ漫画ですからね。」
やれやれとばかりに立ち上がる社長に、山田さんのツッコミが炸裂する。訳の分からない私はそれを見ているだけ。
「山田のリサーチ不足じゃないのか?」
「社長。本来こういうものはご自分で考えて全てをすべきかと。」