甘い脅迫生活
その子は薄茶色のトパーズのような綺麗な目いっぱいに涙を溜めて、私にずっと謝っていた。
酷く滑稽な話だ。私を誘拐した人たちは、私が彼の弟だと思ったらしい。
西園寺家に息子は1人しかいない。栗色の綺麗な髪、宝石のように綺麗な目、薄い唇。あんなにキラキラした王子様はあの家に1人だけ。
西園寺家からはなんのアクションもなかった。間違えられたとしても、それは犯人が勝手にやったこと。西園寺家には一切の落ち度はない。
それでもあの時、あの男の子は私を助けてくれた。そう思う。
『ごめんっ、ごめんっ、』
何度も謝ってくれた彼は、酷く不安そうで、そして、傷ついていた。
「ねぇ、それは、同情?それとも、」
「え?」
本当に、愛情なんだろうか。
深く沈んでいく意識。深い深い闇に包まれても、私は恐怖を感じることはない。
嗚呼、でも。
もし優雨が同情で私と一緒にいるとしたら私は、どうすればいんだろう?
変なの。優雨のことになると、なんでも怖い。
まるで一生分の恐怖が今、襲い掛かってきたかのように、私は今、優雨に抱きしめてほしくてたまらなかった。