甘い脅迫生活



「っっ、……おりっ、」

「……おり、」

「美織!」



全身が熱いのに、体の芯はとても寒い。風邪って怖いな。こんなにも高熱が出るなんて。

最近の疲れが祟ったのか、それとも気が緩んでしまったのか。めったに風邪をひかない人がやってしまうとこんなにキツイらしい。


「美織っ。」

「うっさ。」


とりあえず、耳元で私の名前を叫んでる人、静かにしてくれないかな。熱で熱い上に頭が痛いんだから。


「……美織?」

「な、ん、」


喉の奥が張り付いたように何も言葉が出ない。カラカラに乾いた口の中は唾液すら存在していないんじゃないかと思うほど。


「美織!」


だから……


なによ?



「っっ、」


瞼を開けば、そこは見慣れた場所。自分の部屋の自分のベッドの上で、私眠っていたらしい。首を動かせば、見慣れない加湿器が白い煙を吐きだしていて。


「お母さん。」

「んー?」


その隣の椅子に座って、お母さんが本を読んでいた。


「貴方、1週間くらいうなされてたわ。」

「そう。」

「入院を3日してたんだけど、熱も下がったし、意外と意識もはっきりしてたから、」

「え、覚えてない。」


そう答えれば、お母さんがようやく本から視線を外す。



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