甘い脅迫生活




「……しかし、俺が自分で考えたら成功しない気がすると言ったのはお前じゃなかったか?」

「そうですが、なにか?」



しれっとそう言った山田さん。社長が目を細めた。


「……なら、無理だろ。」

「そうですね。」


……完結してるんですけど。私を置き去りにして2人は満足げに笑い合っている。


「あの。」

「ん?」


目が合う度、社長の目尻が少しだけ緩む、気がして。うぬぼれとは違うけど、こういう優しい笑顔、好きだな、なんて。


ちょっと、変だけど。無言で見つめられるだけでなんだか、落ち着かない。


もう24だ。恋愛もそれなりにしてきたし、初対面の男性相手に何も話せないほど純粋でもない。


こんな、規格外のイケメンは初めてだけど。


「今日、私を呼んだのはどうしてですか?」



だけど、もし万が一副業のことじゃなかった場合を考えて様子を伺うことから始めるくらいには、落ち着いて話せる。と、思う。


私の質問に、社長は溜息を吐いた。なにそれ、失礼な。


「あの、何もないようでしたら私、仕事がありますので、」


このままフェードアウトできるならするに越したことはない。無理だとは思うけどチャレンジくらいはしたいじゃない。


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