甘い脅迫生活
「あら、そうなの。不思議ねぇ。」
「全然そう思ってなさそうだよね。」
苦笑いしてしまうほど、いつものお母さん。
「退院したのはいいんだけど、優雨君が貴女から離れなくてね。」
「……へぇ。」
「あら、照れてんの?いっちょ前に。」
ニヤリと口角を上げたお母さんの悪戯顔に変顔で答えた。ここで照れていますとはっきり言うのも恥ずかしいし。
眉を上げたお母さんは、大きく溜息を吐いて、クスリと笑みを零す。
「あまりに仕事をしないから、秘書に引きずられていったわ。」
「そっか。」
やっぱりここは山田さん。あんな絶対的王様にもちゃんと仕事をさせるらしい。実に優秀な秘書だ。
「ねぇ、お母さん。」
「ん?」
それならそれで、ちょうどいい。
「私と優雨の結婚、なんで認めてくれたの?」
お母さんに聞きたかったことを、今聞けるチャンスだ。
首を傾げたお母さんは、手元の本を畳んでベッド脇の机の上に置く。
「そうねぇ、彼の熱意に、押された感じかな?」
「熱意?」
頷いたお母さんは足を組んで頬杖をついた。
「西園寺家って、うちと相性悪いのよね。」
「はぁ。」
相変わらず、軽いというか。お母さんの軽い言い方に呆れてしまう。