甘い脅迫生活
「優雨?」
なぜか驚き、固まっている優雨を見つめていると、茫然としている優雨がぎこちなく笑った。
「いや、もうだめかと思って。」
「は?」
恥ずかしそうに口を手で覆った優雨は、照れたように笑う。
「貴方といると怖いとか言われたら普通、別れたいんだと思うだろ?」
そう言われてみて、それもそうだと、私も苦笑した。
「ごめんなさい。変な言い方でしたね。」
「いや、いいんだ。」
こうしている間も、しっかりと手を握って離さないくせに。本当に私が別れると言っていたら、この手を離すつもりだったのだろうか?
「私ね、恐怖を感じたことがないんです。」
「え?」
いや、優雨だったら絶対に、この手を離さなかったと、断言できる。
優雨に手招きをすれば、優雨が首を傾げる。だから、自分の隣をポンポンと叩けば、少し困ったように笑う優雨が、ぎこちなく座った。
そんなに緊張されちゃったら、私にまで伝染してしまうじゃない。更に心拍数が上がる。
「子供の頃からね、私は恐いと感じることがなかったんです。」
気を取り直してそう言えば、言葉の意味が理解できていないらしい優雨が、首を傾げた。
思わず笑ってしまう。それもそうだよね。恐怖心がないなんて、普通の考え方じゃ、理解できないから。