甘い脅迫生活
「お疲れっすー。」
「お疲れ様。」
さえちゃんは、高校卒業して1年自由人を謳歌したあとここに就職したという私以上の強者だ。ズバリ聞いてみたけどコネ入社でもないらしい。
大卒以上しかとらないといううちの会社がなぜ採用したのか疑問しかない。しかも仕事場に付け爪してくるような奇抜な子だ。初めはちょっとどうかと思ったくらいなんだけど。
意外と、できおるのよあの子。
「はぁ、私って時代遅れなのかも。」
これから合コンに行くというさえちゃんの浮かれた背中を目で追って溜息と一緒に寂しい言葉が零れる。
さえちゃんはああ見えて、パソコンスキルが鬼のように凄い。どうやら自由人、いわゆるプー花子をしていた時にとんでもない量のパソコン関係の資格を取りまくっていた。
うちの人事、見るとこは見てるなぁ。
基本的な資格しか持っていない私の方がなぜ受かったのかか疑問になったよ。
小さくなっていくさえちゃんの背中を穏やかな目で見つめて、踵を返した。
「さて。」
これから私は、仕事に向かう。
ここじゃない、職場へ。