甘い脅迫生活
「脇坂さん、オーダー入りました。」
「かしこまりー。」
本業と、副業。どちらが好きかと聞かれれば、こっちの方が楽ではある。
こっちの仕事は、オーダーが入ったらその伝票通りに出来上がった料理を盛り付けてフロアの子に渡すだけ。
接客業でもないし、電話も受けない。厨房内で同じ従業員同士で砕けた言葉でやりとりするだけだ。
「あ、脇坂さん、これまかないね。」
「主任、ありがとうございます。」
それに、厨房のみんなはとても良い人ばかりだ。物流部が居心地悪いというわけじゃないけど、ここほど砕けた感じで仕事はできない。
それ以上にあの物流部で晴れ晴れと仕事ができないのは……
副業禁止なのに、ここで働いているという負い目があるからかもしれない。
「いただきます。」
だけど今日も、私は働く。
無理がないように、そしてバレないように、細心の注意を払って。
私には、お金を稼がなくちゃいけない理由があるのだ。