甘い脅迫生活





同時に、自覚してしまった。


やっぱり私は、この人と結婚してしまうんだ、と。



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「受理いたしました。おめでとうございます。」

「ありがとうございます。」


役所は閉まっているけれど、婚姻届けは24時間受け付けてくれるらしい。自治体によって違うかもしれないけれど、私たちが行ったところは、職員が窓口できちんと受け取ってくれた。


書類を受け取ったのは、60代だろうか、かなり年配の男性。事務的なお祝いの言葉に苦笑いが零れた。



それなのに社長は綺麗な笑みを返して、心なしか声も弾んでいるように思えた。


今の私とは、逆。


これじゃまるで、社長が私を好きで結婚しているみたい。



今まさに婚姻届けを出したのに、どこか私は他人事のようにそう感じていた。



車へ戻る途中、社長が立ち止まって背伸びをした。それを見上げているだけの私に気付くと、社長は笑う。


「週末、引っ越しておいで。」

「……。」


結婚の条件。契約書には確かに同居すると書いてあった。


それを思い出したけれど、素直に頷けない。自分でハンコを押したくせに、まだ気持ちの整理がついていないせいだった。



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