甘い脅迫生活
そんな私の感情を、見抜いているのかもしれない。社長の笑みはなんだか酷く寂しそうに見えた。
「3つ。」
「え?」
呟いた社長は、私の手を強く引く。役所の壁にやんわりと背中を押し付けられた。壁がひんやりしているせいか、至近距離で笑う社長のせいなのか、身体が小さく震える。
「3つ、誓う。」
伏せられた瞼が近付いたと思った瞬間、頬に柔らかく、温かい何かが触れる。
大きく心臓が跳ねた。頬にキスをされたくらいで、こんなにもドキドキしてる。
いや、これはきっと違う。社長は中身は別として、見た目だけはすごく素敵な人だし。きっと見た目に騙されているんだ、私。騙されちゃだめっ。
言い聞かせてみても、笑いかけてくる社長を思わず見つめ返してしまう。
「大切にする。」
ロマンチックな場所じゃないけれど、私と社長の関係はそんな甘いものじゃないけれど……
「好きに、ならせてみせるから。」
それでもなぜか、そうさせてほしいとどこかで望んでしまいそうで。
「そして、」
「しゃ、ちょ、う、」
壁に手をついて、私を囲う社長は、嬉しそうに笑って私の首筋に指を滑らせた。なのに……。
「身体も、満足させてみせるから。」
「……。」
最後の最後で、ほんと。