甘い脅迫生活
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「……おり、……みお、美織。」
「はい?」
目を覚ませば、目の前に社長の顔があった。
衝撃の光景に固まったまま、目だけを動かして状況を確認しようと頑張ってみる。
えー、ここはどこかの家。私はフカフカのソファーで寝ていて、そんな私のマウントを取る社長はなぜか美しい顔を歪めて怒っていらっしゃる。
「山田に運ばせたらしいな。どういうことだ。」
「はぁ。」
不機嫌ですと主張する美しい顔はよく分からないことを言ってくる。私寝起きなんだけど。もうちょっと分かるように言って欲しい。
困惑する私の頬に、社長の手が滑る。その時冷たい感触を感じて、手元を見た。
「あれ、社長。」
「……なんだ。」
「指輪、してるんですか?」
「そりゃそうだろう。」
社長の左手薬指にはシンプルな指輪が。当たり前だとばかりに呆れてみせている社長をボーッと見つめた。おかしいな。昨日まではしてなかった気がするんだけど。そう思いながら欠伸をして髪をかき上げたところで、自分の指の違和感に気付く。
「は?」
左手薬指に、指輪。小さなダイヤが一つだけ付いているシンプルなそれは、社長がしているものと同じ物のように見えた。