甘い脅迫生活
「結婚したんだから指輪はいるだろう?寝ている美織に着けて朝サプライズしてやろうと思ったのに。山田から不愉快な報告を聞いて今俺は不完全燃焼だ。」
「いや、社長、これは、」
まさかの指輪の出現に、ある意味サプライズ成功しているなと思ったのは私だけだろうか?なぜかやたら焦ったせいで眠気が吹っ飛んでしまった。
「それに、それだ。」
それなのに、私の上から一向にどく気配のない社長は不満そうに眉間に皺を寄せっぱなしだ。
「いつまで俺のことを社長と呼ぶんだ?」
「いや、社長でしょうよ。」
思わずツッコんでいた。3日前まで私と社長は他人同士で、顔すら知らなかった仲だ。正直、社長が西園寺優雨だと思うのも状況証拠だけ。
メディアや会社の資料で見たわけでもないから、この人が私に社長詐欺を働いていたとしてもなんら驚かない。
確信できたのは、最悪にも婚姻届けの署名欄のおかげ。
そんな私が社長のことを社長と呼ぶことに、なんの違和感があるというのか。
スナップを利かせてまでツッコんでみせた私の主張は間違っていないはず。今不満そうにイラついている社長の方が変でしょ。
……山田さんなら無表情で突っ込んでくれるし、さえちゃんなら「ウケる。」の一言くらいくれそうだ。