甘い脅迫生活




溜息を吐きだした社長が、やれやれとばかりに頭を振る。しょうがない奴、と吹き出しが見えるのは私だけかな?それが異常にムカついてしょうがない。


「俺のことは優雨と呼べ。妻が自分の夫を社長と言うのはおかしいだろ?」

「はぁ。」


別に、私と社長の他に会うのは山田さんくらいだし、別にいいんじゃ?そう思ったけど社長の黒い笑みに、頷かざるを得なかった。


それにしても。


「ふふっ、」

「……なんだ。」

「名前の呼び方にこだわるなんて。社長って案外可愛いとこがあるんですね。」

「っっ、」


目を見開いた社長は、唇を尖らせたけど。突然それを不敵な笑みに変えて、顔を近づけてきた。


「しゃ、しゃちょー。」

「社長じゃない。優雨だ。」


毎度思うけど、社長も山田さんも距離が近くないだろうか?私と社長の距離は、指一本も入らないほど。今どちらかが顔を動かせば、キスをしてしまいそうな近さだった。


「呼んでみろ。」

「っっ、」


社長の吐息が当たる。近すぎる距離に息をするのもおぼつかない。


「呼べ。」


笑顔の命令は、絶対的で。少しずつ近付く唇は、すぐ触れられる位置にいるぞと主張する。



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