甘い脅迫生活
愛情か、契約か
「ところで、君はここまで山田に運ばせたらしいな。どういうことだ?」
「何をですか?」
突然、スイッチが切り替わったように優雨が不機嫌になった。質問の意味が分からず聞き返すと、更にムッと口を堅く結ぶ。
「山田に聞いたぞ。車の中で寝てしまって、どうやっても起きなかったから抱いてここに運んだと。それに、コンシェルジュからの目撃証言も取ってある。証拠は揃ってるんだぞ。」
「え、こんしぇ、え?」
「コンシェルジュだ。」
混乱する私にグイと迫った優雨は、またまた至近距離で見つめてくる。
……せっかく、離れてホッとしてたのに。この人の顔は笑っていようが不機嫌だろうが、いちいち心臓に悪い。
心拍数が上がるのを必死に抑えながらも、寝ぼけてまだ鈍い頭をフルに動かして考えた。優雨が言っていることが本当なら、車で寝落ちした私は山田さんにここまで運ばれてきたということだ。それに、コンシェルジュ?ホテルにいるあれ?それがどう関係するのかも分からない。
「すいません、意味が分からないんですが。」
だから素直にそう言えば、目を見開いた優雨が鼻を鳴らした。
「案外君は馬鹿なんだな。」
ムッとした。
「説明もなしに突然問い詰めてくるからでしょ。」
そのせいで吐き出した言葉。そっぽを向いていた私は、なぜかそれを言われて笑う優雨に気付いていなかった。