甘い脅迫生活
「何をそんなにカリカリしてるのか分かりませんけど、とりあえず山田さんの連絡先を教えてください。」
だけどその笑顔も、私が見ることもなくまた不機嫌に歪んでしまったらしい。
「なんで山田のを?もしかしてタイプなのか?」
だって次に私が優雨を見た時には、眉間に深ーい皺を寄せていたのだから。
……前から思ってたけど。
「社長。」
「……なんだ。」
腕を組んでツンツンしているこの人って……。
「あの、馬鹿、なんですか?」
「なんだと?」
目を丸々と見開いてびっくりしてみせているけど、この人がかなりイっちゃってるのは、間違いないと思う。
突然脅迫して結婚を迫って、今はこうして訳の分からないことを言いだす。
あまりにもイメージと違い過ぎて。私の中の西園寺グループ社長像はガラガラと音を立てて崩れっぱなしだ。もうほぼ壊れつくしてるよ。足くらいしか残ってないよ。
「いい年して運ばれても起きないなんて、恥ずかしいじゃないですか。」
盛大な溜息を吐いた。山田さん、重かったでしょうに。
あの山田さんのことだからあとで会った時に重かった、とはっきり言われそうだ。