甘い脅迫生活
そんなことを思って、ハッと我に返った。私って結構、この結婚に乗り気じゃない?
細々決めないと、とか、2人の気持ちが、とか、どう考えても脅されて結婚した人が思うことじゃない気がする……
どうしよう、私。実は優雨以上に能天気なんじゃ。
「山田には後日お礼を言うとして、」
「そこはやっぱり教えてくれないんですね。」
自分の残念さを認識しながらも、優雨に呆れることは忘れない私。
「コンシェルジュについてだが、もう会ってるだろう?」
「え?」
小首を傾げる優雨は、いつの間にかスーツの上着を脱いでソファーの背もたれにかけていた。寛いでいるその姿に、胸がざわつく。ほんとに家での姿って感じだ。
「会ってませんけど。」
「おかしいな。一昨日はここに自分の足で来ただろう?」
妙に引っ掛かる言い方。もしかして、だけど。
「あの、まだ山田さんのこと気にしてます?」
「気にしてるが。」
「……。」
ここまでしつこいと、逆に称賛に価するな。
「私、ほんとに会ってないんですけど。」
「……。」
優雨が目を細めて私を見つめるのを、視線を逸らすことで誤魔化した。これ以上揉めるのはめんどくさそう。ここはスルーが一番だ。
しばらく笑顔で見つめ合った後、優雨が視線を逸らした。
勝った!
内心ガッツポーズをした。