甘い脅迫生活




そんなことを思って、ハッと我に返った。私って結構、この結婚に乗り気じゃない?


細々決めないと、とか、2人の気持ちが、とか、どう考えても脅されて結婚した人が思うことじゃない気がする……



どうしよう、私。実は優雨以上に能天気なんじゃ。


「山田には後日お礼を言うとして、」

「そこはやっぱり教えてくれないんですね。」


自分の残念さを認識しながらも、優雨に呆れることは忘れない私。


「コンシェルジュについてだが、もう会ってるだろう?」

「え?」


小首を傾げる優雨は、いつの間にかスーツの上着を脱いでソファーの背もたれにかけていた。寛いでいるその姿に、胸がざわつく。ほんとに家での姿って感じだ。


「会ってませんけど。」

「おかしいな。一昨日はここに自分の足で来ただろう?」


妙に引っ掛かる言い方。もしかして、だけど。


「あの、まだ山田さんのこと気にしてます?」

「気にしてるが。」

「……。」



ここまでしつこいと、逆に称賛に価するな。


「私、ほんとに会ってないんですけど。」

「……。」


優雨が目を細めて私を見つめるのを、視線を逸らすことで誤魔化した。これ以上揉めるのはめんどくさそう。ここはスルーが一番だ。


しばらく笑顔で見つめ合った後、優雨が視線を逸らした。


勝った!


内心ガッツポーズをした。



< 71 / 185 >

この作品をシェア

pagetop