甘い脅迫生活
「このマンションには、コンシェルジュが常駐している。」
「え?」
驚いた。コンシェルジュって、ホテルにいるイメージしかなかったから。
「管理人みたいなものですか?」
「少し違うが。まぁ、そのようなものだな。コンシェルジュは常に下にいる。美織の顔と名前は憶えてもらったから、何か困ったことがあれば頼ればいい。」
鍵、忘れたとか?そんなしょうもない理由でもいいのかな。家にコンシェルジュがいるなんて、庶民の私には考えられないことだ。私がいたアパートとえらい違いだな。
あまりのギャップに謎に落ち込んだ。
「さて、美織。」
「はい?」
気が付けば優雨が、自分の隣にピッタリと寄り添うように座っていた。その距離の近さに、心臓が跳ねる。
「ようこそ。西園寺家へ。」
「……どうも。」
どうやら、私の結婚生活が突然始まってしまったようです。
優雨の爽やかな笑顔を前に、ぎこちなく笑い返した。