甘い脅迫生活




それを見ただけで。さえちゃんにそんな才能があったとは。


「200万。」

「ん?」


低い声で呟いたさえちゃんは、指輪を更に近くで見て呟いた。



「これ、200万円する、超高級指輪です。」

「「え!」」


飛び込んできた情報は、もれなく私と所長を驚かせた。


「知らなかったんですか?」

「え、いや、そりゃー、自分で買ったわけじゃ、ないし?」



訝し気な表情のさえちゃんから、さりげなく目を逸らした。


まさかこの指輪がそんなに高いなんて思わないじゃない。シンプルなデザインだからそれほどお高くないと思っていた。


どどど、どうしよう。とんでもないものが自分の指についているらしい。


知らないって幸せなことだな。ほら、値段を聞いた途端怖くなってきたんだけど。強盗に遭ったらどうするの?自分の借金に加えて200万の上乗せ。残金に比べたらそんなに変わらないかもしれないけど、ここにきて更に200万は痛い。


優雨も優雨だ。高い指輪ならそうと言ってくれないと。そしたらどれだけ駄々をこねられても家に置いてきたのに。


まさに朝、揉めてきたばかりだ。当たり前に指輪を外して出勤しようとしたら抗議された。


でもほら、正解だった。その結果が今の混乱を招いている。



< 74 / 185 >

この作品をシェア

pagetop