甘い脅迫生活
それにしても……、気になるのはさえちゃんのリアクションだ。
「あの、さえさん。もしかして、なんですけど、何か怒ってます?」
「ええ、怒ってます。」
即答かよ。愛想笑いが更に引きつる。
昨日帰る時は笑顔だったのに。何か嫌なことでもあったのか。いや、でも指輪に気付くまでは普通に笑顔だったよね。
理由が全く予想がつかない私は、たださえちゃんを見ているだけ。
すると突然、さえちゃんが目を手で覆って俯いてしまった。
「えっ、さえちゃん?」
「立木!?」
明らかに泣いてる感じだし、どうしよう!
ここにいるのは私とおっさんだけ。泣いている女の子の慰め方なんて分かりっこなかった。
オロオロする所長と私。今誰か人が来たらかなり変な光景だろう。
すると突然、さえちゃんが顔を上げる。
勢いにびっくりして一歩引いたけど、さえちゃんの顔は思っていたものとは違って、怒りを表していた。
「水くさいです!」
「へ?」
私の肩をガシッと掴んださえちゃんが、前後に揺らしまくる。脳、脳が揺れるっ。ガクガクと揺れる視界にクラクラした。