甘い脅迫生活




それにしても……、気になるのはさえちゃんのリアクションだ。


「あの、さえさん。もしかして、なんですけど、何か怒ってます?」

「ええ、怒ってます。」


即答かよ。愛想笑いが更に引きつる。


昨日帰る時は笑顔だったのに。何か嫌なことでもあったのか。いや、でも指輪に気付くまでは普通に笑顔だったよね。


理由が全く予想がつかない私は、たださえちゃんを見ているだけ。


すると突然、さえちゃんが目を手で覆って俯いてしまった。


「えっ、さえちゃん?」

「立木!?」


明らかに泣いてる感じだし、どうしよう!

ここにいるのは私とおっさんだけ。泣いている女の子の慰め方なんて分かりっこなかった。


オロオロする所長と私。今誰か人が来たらかなり変な光景だろう。



すると突然、さえちゃんが顔を上げる。


勢いにびっくりして一歩引いたけど、さえちゃんの顔は思っていたものとは違って、怒りを表していた。


「水くさいです!」

「へ?」


私の肩をガシッと掴んださえちゃんが、前後に揺らしまくる。脳、脳が揺れるっ。ガクガクと揺れる視界にクラクラした。



< 75 / 185 >

この作品をシェア

pagetop