甘い脅迫生活





「はぁっ、疲れたー。」



副業も終わり、ようやく帰宅。時刻は夜の12時。優雨の家は私の家よりも少し遠い。そのせいで家に帰る時間も余計にかかる。


今月末までの我慢だとしてもこれは少々きつかったり。さっき電車で寝ちゃって隣の人の肩を借りてしまったし。


【迷惑です。】と顔に書いてあるその人に謝り倒して逃げるように電車から降りた私。そこまで怒らなくてもよくない?いや別に喜べとも言わないけど。


世知辛い世の中だ。疲れているからか理不尽にもそう思ってしまう。



家に帰ってみれば、優雨はまだ帰ってはいない。さすがそこは社長業をしているせいか、私の忙しいとは次元が違うようだ。


広い家。フカフカのソファー。このままじゃ、きっと。


「やばい。寝ちゃう。」


そう思いながらも身体は安眠を求めてソファーにますます沈んでいく。ソファーのくせに私の元ベッドより寝心地がいいなんて。


しかも今は家主がいないせいか、足を投げ出して寝転べる。この解放感が私に寝てしまえと囁き続ける。



「はぁ。」


トロンとした意識の中、左手を掲げた。


左手薬指に光る恐ろしい値段の指輪。それを見るだけで複雑な気持ちになる。




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