甘い脅迫生活





「これは立木さんだから言うんだけどね。」

「先輩も聞いてますけど。」


2人の視線は私に向かう。


「あれ、出ていましょう、か?」


親指を外に向ければ、所長になぜか親指を立ててウインクをされた。


「脇坂さんも聞いてよし!」

「はぁ、それはどうも。」

「私だからって設定どこ行ったんですかー?」


そんなさえちゃんのツッコミをスルーした所長は、手招きで少し寄れと言ってくる。渋々少し寄れば、わざわざ口元を手で隠した所長は小さな声で話しだした。


「うちの社長、やり手なんだけどとにかく怖いんだよ。年に1回、必ず集まる総会というのがあるんだけどね、その時に見て感じた話だからまた聞きじゃないよ。」


「えー、画像じゃ凄い爽やかイケメンでしたよ?」



さえちゃんが指先をくるくるさせながら反論するも、所長は一所懸命に首を横に振った。


「とんでもない!あの笑顔の下には悪魔がいるんじゃ?って言われてるほど怖い人なんだよ!実力だけじゃなく、日々の締まり、というか、とにかく、服装から規則まで、決まりをとにかく重んじる人だ。もしあの人に逆らいでもしたら首が飛ぶか、よくて左遷だよー。だから立木さん!頼むから制服をまともに着て、爪とかも社会人風にしてきてよ!」

「社会人風ってどんなのすか?」



懇願する所長と首を傾げるさえちゃんのやり取りを見ながら、私の頭の中は疑問でいっぱいだった。



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