甘い脅迫生活
「えーと、脇坂くん?」
「はい?」
所長の呼びかけに手を止めて振り返れば。
「なんだろ。俺が今感じてることに、明確な答えはいただけるのかな?」
「へ?」
茫然とした様子の所長と、無表情で口元を抑えて肩を揺らしている山田さんがいた。
優雨を見れば、なんだか満足そうに笑っていて。
もう一度所長を見れば、あんぐりと口を開けて私を見ている。
「あの、優雨?」
「なにかな?」
「もしかして私、」
やっちゃい、ました?
私の質問に、山田さんが至極冷静な声で答える。
「普段通りでなによりです。」
「ふっ、」
「……。」
噴き出した優雨が肩を揺らす。
「あー、ははは。」
誤魔化し笑いをしてみる。だけど所長はやっぱり騙されてはくれないらしい。これは罠かと思うくらい、自然と普段通りにしてしまった自分を呪ってやりたい。
どうやら私、やらかしてしまったらしいです。