甘い脅迫生活




「えーと、脇坂くん?」


「はい?」


所長の呼びかけに手を止めて振り返れば。



「なんだろ。俺が今感じてることに、明確な答えはいただけるのかな?」

「へ?」



茫然とした様子の所長と、無表情で口元を抑えて肩を揺らしている山田さんがいた。


優雨を見れば、なんだか満足そうに笑っていて。


もう一度所長を見れば、あんぐりと口を開けて私を見ている。



「あの、優雨?」

「なにかな?」

「もしかして私、」



やっちゃい、ました?


私の質問に、山田さんが至極冷静な声で答える。


「普段通りでなによりです。」

「ふっ、」

「……。」


噴き出した優雨が肩を揺らす。


「あー、ははは。」


誤魔化し笑いをしてみる。だけど所長はやっぱり騙されてはくれないらしい。これは罠かと思うくらい、自然と普段通りにしてしまった自分を呪ってやりたい。




どうやら私、やらかしてしまったらしいです。





< 96 / 185 >

この作品をシェア

pagetop