甘い脅迫生活
それに、考えてみれば、さっきから黙ってるけど優雨には山田さんが付いているわけで。
私の人生を丸裸にしたあの人なら、うちの配送所の普段のだらけ具合くらい調べていそうだ。
それに、さっきのクッキーだって。優雨が食べるの苦手なの山田さんなら知ってたはず。それを止めなかったということは、私がついあんな行動をすることを待ってたんじゃ……なんて。
山田さんの存在に惑わされている自分がいる。
実際、敵に回したらダメだと本能で感じてます。
「山田。」
「は。」
全てを言い終わったのか、優雨が山田さんを呼ぶ。すぐに一歩前に出た山田さんは、ほぼ屍と化している所長の肩にそっと手を置いた。
「社長が配送部を巡回なさいます。ご案内を。」
「はい!」
よほど強い力で掴んだのかな?そう思うほど所長がその手から逃げるように飛び上がる。
「こちらへどうぞ。」
そう言って先導する所長の背中が一回り小さくなった気がします。もう少しだよ。頑張って!所長の背中に向けてガッツポーズをする。
だけどそれを遮るように優雨が現れて、私にウインクをした。
「キザ。」
聞こえないように悪口を言ってみる。それが聞こえるはずもない優雨は背を向けて出て行ってしまったけど、なぜか山田さんが振り返った。