透明ジェラシー

名前と容姿が釣り合っていない。
相応しくない。


誰かに名前を呼ばれるたびに、惨めな気持ちになった。親が与えてくれた名前までもが嫌いになった。





ビニール傘を開くと登校中についた水滴が跳ねた。友達と肩を並べて帰路につく生徒の川をぼーっと眺めていたら、「千桜ちゃん」と呼ばれた。思わずビクッとなった。

はっとして隣を見やると不思議そうに私を見るあや子(アヤコ)ちゃん。


「帰ろう?」

「……うん」


声優のような可愛らしい声のあや子ちゃん。最後の一年で同じクラスになっって、何となく知っていた仲から友達になった。


そして私と似ている。


彼女は、可愛くないのに可愛い声の持ち主。

最近彼女の悪口を聞いた。


『声だけ聞いたらモテそうなのに、顔見たら幻滅だよね』
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