白い息の向こう側
「う、うるさい。その子を渡せ」

 悪役よろしくなセリフ吐いてんじゃないわよこのデブ。仕方が無いとスマートフォンを取り出す。

「私のスマホはとても優秀なの。緊急ってところをタップすると自動的に警察が駆けつけるというシステムなのよ」

「本当か? 見せてみろ」

 デブは意外と頭がよかった。これはまずい。

「お姉さん、こないだ空手の選手権で二位だった人だよね。僕、おぼえてるよ」

「え、ええ。まあ」

 突然、何を言い出すんだこの子。私は高校時代はテニス部だぞ。従ってテニスしか出来ない。デブをラケットでぶちかましたい。

 しかし、その言葉でデブはたじろいだ。ナイス少年。

 私はすがりつく少年を見下ろし、何もかもが小さい。可愛いなと思った。

「僕に話しかけるなデブ」

 態度はでかいけど。
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