君が好きなんて一生言わない。
「椎先輩の他にはいないんですか?」

「いないよ」

「え?」

「僕だけだから」


目を見開いて固まる私に先輩は言った。


「ああ、でも、もう一人いる。兼部してる方が忙しいから、あんまり活動には参加しないけど」


「いてくれるだけ助かるけどね」と先輩は声を漏らす。


つまりは、いつも椎先輩ひとりで活動しているということだ。それって寂しくないのかな。

すると私が問いかけようとしていることに気づいたのか、椎先輩は言った。


「まあ、一人の方が気楽だから」


呟くようだったのに、どこか投げやりのようにも聞こえた。

わざとそう言っているような、本当はそう思っていないような、そんな気がして胸が痛んだ。

どうしてそんな風に言うのだろう。そんなこと言われたって私は笑えないのに。


「もうじき暗くなる。早く帰った方がいいよ」

「先輩は帰らないんですか?」

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