君が好きなんて一生言わない。
私は目を丸くした。

ああ、紗由には敵わない。そう思わざるをえなかった。


「何か、言われたの?」


眉をひそめる紗由に「違うよ」と私は言った。


「誰も、何も悪くないんだ」


そう、誰も悪くない。

紗由も、椎先輩も、美紅ちゃんも。今回のことに関して言えば悪者は誰もいない。


だけど、今のままでは椎先輩には会えない。


どんな顔をして会えばいいのかすら分からないんだ。


「…紗由に聞きたいことがあるの」


私は両の拳を握りしめて勇気を振り絞る。

紗由は「わたし?」と自分を指さして不思議そうな顔をした。


「紗由は、好きなひとっている?」


突然の私の問いかけに紗由は目を見開いた。

それから「え?突然どうしたの?」なんて笑う。


けれどそれが誤魔化しだとすぐに分かった。


「まあ、わたしだってこれでも女子高生だからね。好きなひとの一人くらいいてもおかしくはないでしょ」


紗由が小さく笑うのを見て、私は美紅ちゃんの言葉が本当だったんだと確信した。



「いるよ、好きなひと」



紗由は私の目を見据えていった。






「椎先輩が好きなの」





分かっていた答えだけど、壊れてしまいそうなほどに胸が痛い。


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