君が好きなんて一生言わない。
「これを、この花を、麗の通う学校で咲かせてほしいの」

「麗の?」


この時は何を言われているのか分からなかった。

頭にハテナマークが浮かんでいるのが分かったのだろう、おばさんは「難しい話をしてしまったわね」と目を細めて説明してくれた。


「麗はきっとこの先もどんどん立派になっていくわ。それをね、このお花と一緒に見守っていたいの」


「お願いできるかな?」と言われ、俺は迷わず頷いた。


「ありがとう、椎くん。これかも麗をよろしくね」


優しい笑顔だった。

いつもと同じ、だけど少し疲れているようにも見えた。


「麗ママも、このお花が咲くのを麗といっしょに見れたらいいね」


俺の言葉におばさんは目を見開いて、それから「ええ、そうね」と微笑んだ。

儚いなんて単語はこの時知らなかったけど、今にも消えてしまいそうな危うさを感じてはいた。

だから少し悲しくて息が詰まるようだった。


ちょうどその時麗がやってきて「できた!」と言って見せる。

さっきとは色の違う、折り鶴が両手にあった。


「麗は折り紙が上手ね」


褒められて喜んだ麗は嬉しそうに笑って「しーくんも、やろ!」と手を掴んで会談室へと行こうとする。


「しーくん、しってた?おりがみでつるをたくさん作ったら、おかあさんが元気になるんだって!」


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