君が好きなんて一生言わない。
一心不乱に折り鶴をつくる麗の姿を見ながら俺は麗の名前を呼ぶしかできない。


「かんごしさんがね、いってたんだ。おりがみでつるを千羽つくったら、おかあさんのびょうきをなおしてくれるんだって。だから麗はたくさんつくるの」


麗が言うのは千羽鶴のことだと俺はすぐに気づいた。


「おかあさんは病気だから、麗がまもるの。おとうさんもいなくなっちゃったから、麗がおかあさんをまもるの」


そういって折り紙を折り続ける麗の手をとって俺は言った。


「じゃあぼくが麗のことをまもるよ」


何を言ったか分からなかったのか、麗は顔を上げて不思議そうな顔をする。


「ぼくがかならず、れいのことをまもるよ」


この小さな手を、きらきらした瞳を、明るい笑顔を、麗という存在を守りたいと思った。

この笑顔をずっと見ていたかったから。


しかし麗はよくわからないという顔をして、それから俺に言った。


「それって、ずっといっしょにいてくれるってこと?」

「うん、ずっといっしょだよ」


すると麗はぱあっと明るい笑顔をして俺のところにかけよってくると小指を指しだした。


「やくそくだよ」


小指を絡ませて、お互い笑って。

この時は永遠だって思った。

約束を破ることなんて一度もないって。


思ってたのに。




「…ひっこし?」


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