君が好きなんて一生言わない。
約束を交わして1か月も経たないうちに、俺はこの町から引っ越すことになった。

親の転勤のせいで、俺にはなす術もなかった。


「そうなの。急でごめんね、椎」

「突然決まったことなんだ。仲良しの友達もいるのは分かっているけど…」


両親は「ごめんね」と言うけれど、俺にはどの言葉も入ってこなかった。


「れいをひとりにしちゃう…。やくそくをやぶっちゃう…」


脳裏には麗の笑顔ばかり浮かんでいた。

引っ越しの話が決まってから次々に家中の荷物はまとめられて、結局麗とも麗のおかあさんとも会えないまま他の町に引っ越すことになった。


「れい、げんきかな」


新しい町で暮らす中も麗の笑顔が消えなくて、親に問うと「きっと元気よ」と言われた。


「もうすぐお母さんもお仕事お休みになるから、そうなったら麗ちゃんに会いに行こうね」



けれど待ちに待ったその日は、俺を地獄に突き落とす日でもあった。



「亡くなった?」

「ええ、どうもそうらしいの。麗ちゃんのお母さん亡くなったって…」

「じゃあ、麗ちゃんはどこに?」

「それが…」


母親が前に住んでいた家の近くの人と話しているとそんな会話が聞こえてきた。

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