君が好きなんて一生言わない。
バスケ部の試合の時、第1クオーターが終わった後、麗は飲み物を買いに行くと俺の傍を離れた。

でも第2クオーターが始まって暫くしても麗は帰ってこない。

迷子になったのかと思ったけど、流石に母校で迷うことはない。

…変な胸騒ぎがした。

麗を探そうと自販機まで来たけど姿はない。

入れ違いになったかと2階入り口まで戻ったところで、「椎先輩!」と誰かに呼び止められた。

知らない1年生の女の子だった。麗ちゃんとは違う、活発そうで、なんとなく頬が赤いような気もする。


「ごめん、今忙しいんだ」

その場を立ち去ろうとしたけど、「麗のこと、お願いしますね」と言われた。


「え?」


思わず立ち止まり振り返りとその子はやさしい笑みを浮かべている。


「麗と一緒なんですよね。麗から聞いてます。あの子、すごくいい子なんです。だから、よろしくお願いします」


頭を下げる目の前の子を見て分かった。

この子は麗ちゃんの味方だ。


「麗ちゃん、自販機で買ってくるって行ったまま、帰ってこない。姿も見つからないんだ」


「え?」


女の子は表情を一変させた。

目を見開いて、信じられないと言わんばかりの表情をしている。


「と、トイレとかじゃなく?」

「分からない。それならいいけど、胸騒ぎがして」


麗は家だけでなくクラスでも虐められている。だからこそ余計に嫌な予感がする。

女の子もそうなのだろう、「わたしも探します」と名乗り出てくれた。


「麗に何かあったら心配なので」


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