君が好きなんて一生言わない。
「ありがとう。助かるよ。えーっと…」

「紗由です。白枝(しろえだ)紗由」

「紗由ちゃん、よろしくね」


紗由ちゃんと一緒に探しても一向に見つからず、二手に別れて探すことになった。

紗由ちゃんが会場である体育館を、俺が会場以外を。

探して歩いていると部室棟の方から微かに声が聞こえた気がした。

まさかと思って近づくと、ちょうど麗が水をかけられている場面に出会した。


「ねえ、何してるの?」


気がついたら麗を囲む女の子達にそう言っていた。

うちの制服を着ているから、同じ高校の生徒らしいけど見たことはない。当然知らないけど、向こうは俺のことを知っているらしい。


でもそんなこと、微塵も関係ない。


ただ苛立って仕方がなかった。


麗を虐めたこの女子達が。


何より、麗を守れなかった自分が。


麗は「ありがとう」だなんて言ってくれたけど、全然違う。

俺は麗に感謝されるようなことは少しもしていない。

隠し事だってたくさんある。


「そういえば、あの植物、なんですか?」

「あの植物?」


麗ちゃんが言うのは、校門の横の花壇に植えたスノウドロップだった。

麗のお母さんに託されたスノウドロップはこの寒さの中でもすくすくと成長していた。

スノウドロップの花言葉は、「希望」と「慰め」。

いつも温かく麗を見守っていた、麗のお母さんらしい花言葉を持つ花だ。



「…あれは、特別な花だよ」

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