君が好きなんて一生言わない。
麗の声が聞こえてきて、はっと意識をそちらに向ける。


…麗はなんて答えるのだろう。

麗が幸せになれるならそれでいいと分かっているはずなのに、心からそう思っているのに、それでも麗の答えが気になって仕方がない。

逸る心臓を抑えるように拳を握りしめていると「今答えなくていい」とあいつのいつもの明るい声が聞こえてきた。


「答えは、今すぐじゃなくていい。いつでもいいから、また返事を聞かせてくれ」


…俺とユズは付き合いが長いから、嫌になるくらい、あいつのいいところを俺は知っている。

あいつは強引なところもあるけど、本当に優しいやつなんだ。

今だって、返事に困った麗をこれ以上苦しめないように切り上げた。


俺が思う、いちばん誰かを幸せにできる男はユズだ。

そして俺がいちばん幸せになってほしいと思う人が麗。


その二人が一緒になれば、俺の大事な二人が幸せになれるんじゃないか?


これ以上の望みなんてないかもしれない。


そう思い立った俺はそっとその場を後にした。


荷物をとりに教室に寄ると、誰もいないはずの教室にユズがいた。


しまった、と思った。

まさかユズが教室に戻ってきていたとは思わなかった。

さっきの告白を盗み聞きした後では気まずいったらない。
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