君が好きなんて一生言わない。
「…たまたま、通りがかったら聞こえてきた」


理由はどうであれ、俺には聞かれたくなかっただろうと思い「ごめん」と謝ったけど、ユズは「謝る必要なんてない」と言う。


「別にお前に知られたからって何も問題はねーよ」


それから俺を真っ直ぐ見つめて言う。


「俺はお前にちゃんと言ったからな。俺は麗ちゃんが好きだからって」


目を見開いた。

その言葉は事実で、けれど胸を突き刺すようでもあった。

俺を責め立てるようで、胸が痛い。


「俺はお前が強いって知ってる。誰よりも心が強いやつだって思ってる。そんなお前に尊敬してて、俺はお前に恥じない親友でありたいって思ってきた。今だってそうだ」


ユズが俺を尊敬している。そんなことがあるなんて思ってもいなかった。

俺には誇れるものなどなにもない。

けれどユズは嘘をついてはいないらしかった。

ユズの真剣な瞳が燃えるように俺を見据えている。


「なのに、今のお前はなんなんだ!」


俺の胸ぐらを掴むユズは怒っていた。

本気で、怒っていた。


「お前はなんで自分の気持ちに正直にならない!なんで俺に何も言ってくれない!」


それが悲しいんだと、言わなくても伝わってきた。

痛いくらいに伝わってきた。


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