君が好きなんて一生言わない。
「…俺は麗ちゃんとの約束をたくさん破った」


麗のそばにいること。ずっと一緒にいること。

麗を守ること。


麗との約束を守れたためしなんてなかった。


結果、麗は記憶を失い、親戚の家に引き取られて精神的な虐待を受け、学校でも虐められている。

いじめの首謀者の中村美紅は学校でも家でも虐めて、麗は逃げ場を失った。

こんな悲惨な現実に麗を突き落としたのは、麗の家族の死なんかじゃない。


麗を守るという約束を守れなかった、俺自身だ。


「麗を苦しみを何度も救えなかったこの俺が、笑って麗の隣に立つことが許されると思う?」


答えは、ノーだ。

問うまでもない。

当たり前だ、許されるわけがないだろう。


どれだけ好きでも、その気持ちを打ち明けてはいけない。

例え麗が俺を好きになってくれていたとしても、俺は麗の手を取るわけにはいかない。


これは俺が受けるべき罰だ。


「俺は麗ちゃんが幸せになれたらそれでいい。麗ちゃんが幸せになるためなら、俺は何だってやる」


そこまで言うとユズは苦しそうに顔を歪めた。


「そのために、麗ちゃんが他の誰かのところへ行ってもか?」

「それが麗ちゃんの幸せなら」

「それほど好きなのにか?」


「何度も言うなよ」と俺は溜め息を吐いた。


「とっくの昔に覚悟は決めてる」


もうこれ以上、幸せを掴めなくていい。

想いが報われなくていい。

だから麗だけは幸せになってほしい。
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