君が好きなんて一生言わない。
「"好き"って、思ってるよりけっこー醜いんだ」と先輩は言った。


…その通りかもしれない。


紗由がもし椎先輩以外の人が好きだったら、きっとこんなに苦しむことはなかった。

むしろ上手くいきますようにと願うことさえしただろう。


それでも今、お世辞にも上手くいってほしいと願えないのは、紗由の好きな人が椎先輩だからだ。


私も好きなのに、って、

とらないで、って、


きっと心の奥底で思っているからだ。


じゃあ、どうする。


椎先輩への、紗由への、この醜い感情を、私はどうすればいい?




「言えばいいだろ」




ユズ先輩はさも当然と言わんばかりの顔をして言った。


「え…」

「要は、親友と同じ人を好きになってしまったっつーことだろ?」


私は目を見開いた。


「どう、して…」


一度もそんなことを言っていないのに、どうしてユズ先輩は分かってしまったのだろう。


「麗ちゃんは顔に出やすいからなー」


ユズ先輩は明るく笑った。


「なら話は単純だ。好きだって言えばいい。自分の気持ちを全部」


…随分と簡単に言ってくれる。

そんなこと、できっこないからこんなに苦しんでいるのに。


「できませんよ、そんなの」


私は言った。


「言ったら、関係を失うかもしれないじゃないですか。一人になるかもしれないじゃないですか」


私と仲良くしてくれた、居場所をくれた、大好きな人達を失うことなんてしたくない。

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