君が好きなんて一生言わない。
「それに、私一人が我慢したらどうにかなる問題なら…」


「それでいいです」と言おうとしたけれど、それを遮るように「ダメだ!」とユズ先輩は断言した。


「麗ちゃんが犠牲になるようなこと、俺は許さねえぞ!」


そうは言われても、それ以外に選べる道はないだろう。


紗由と椎先輩には幸せになってもらいたい。

できるなら傍にいたい。

でも二人が一緒にいることで幸せになれるのなら、私は離れるしかない。身を引くしかない。


「まだ、分かんないだろ?その人が親友を選んだって、確定したわけじゃないんだろ?」


「それは、そうですけど…」


「なら麗ちゃんが身を引く理由もねーだろ」



ユズ先輩は明るい未来を描ける人だと思った。

先輩の言葉は力強くて、輝いていて、聞いているだけで未来は楽しいと思えるから。


でも私は、その明るい未来に触れることは許されない。


「自分勝手な理由で人に迷惑かけるなんて…」


「迷惑かけない人間がどこにいる」


先輩は真っ直ぐ私の目を見た。



「俺が好きな麗ちゃんを、麗ちゃんが悲しませないでくれ」



「頼む」と先輩は眉尻を下げて笑う。

その笑みが悲しくて優しくて、私は目を見開いた。

< 149 / 179 >

この作品をシェア

pagetop