君が好きなんて一生言わない。
優しい言葉をくれた紗由に、私は「あー…」とはっきり返事できなかった。

クラスメイトが私を見下ろしている。その顔が怖くて、私は逃げた。


「ごめん、先行ってて。私、用事済ませてから行くから」


私がそう言うと、紗由は「そっか」と少し寂しそうな顔をした。


「紗由、行こう行こう」


クラスメイトの急かす声に返事をしながら、紗由は私に「早くおいでね」と言った。


「ありがとう」


笑顔をなんとか張り付けてそう答えた。

紗由が教室を出たところで、残ったクラスメイトの大きな声が聞こえてきた。


「あーあ、ほんと紗由って優しいよねー」


びくり、と肩が震える。


その声は、クラスの女子の中心的な人物で、私をいじめるリーダーでもある、中村美紅(なかむら みく)ちゃんのもの。


その声が聞こえた途端、心臓がどくんどくんと痛いくらいに鼓動する。


「ほんとだよ、あの清水と話せるのなんて紗由くらいだわー」

「わたし絶対話したくなーい」

「話したい人なんていないんじゃないのー?」

「言えてるー!」


美紅ちゃんとそのとりまき達は私がここにいることに気づいていないわけじゃない。

わざと私に聞こえるようにしゃべっている。

私に聞かせようとしている。
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