君が好きなんて一生言わない。
私なんかを好きだと言ってくれたこの人に幸せを願われて、それを叶えないなんてできないと思った。

これを断ってしまうことは、自分の存在を否定されるのと同じくらい胸が締め付けられる。

きっと私が幸せになれなかったら、ユズ先輩は私以上に悲しんでくれるだろうから。



「ユズ先輩…私は…」



最後まで言い切る前に、先輩はにっこり微笑んで言った。




「麗ちゃんに告白した時、返事は待つって言ったけど、聞くまでもないな」




先輩は全てを分かっているようだった。

私に好きなひとがいることも、それがユズ先輩でないことも。

私の好きなひとの名前も、きっと。


歯を見せて笑う抜群に明るいユズ先輩が哀しく見える日が来るなんて想像もできなかった。

周りに元気を与えるこの笑顔を見て辛いと思うなんて、まるで天変地異が起こるのと同じくらい信じられない出来事だ。



「後悔なんてしないように、行ってきな」



先輩は私を励まし続ける。

鮮やかな言葉を惜しげもなく、まるでシャワーのようのたくさん降らせる。


「どうして先輩は、そんなに優しいんですか…」


泣かないユズ先輩の代わりに私が泣いてしまいたかった。

泣くのはお門違いと知りながらも涙腺はつい緩んでしかたがない。

そんな私を見てユズ先輩はわたしの頭を撫でると「なんで麗ちゃんが泣きそうなんだ」と白い歯を見せた。


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