君が好きなんて一生言わない。
先輩なら分かっていたはずだ。あの時、私が好きだと言おうとしていたこと。

断るにしても、私が好きだと言ってからでも遅くなかったのに、被せるようにして自分の気持ちを語った。


多分、先輩は私から好きだと伝えられることから逃げたんだと思う。


そう考えてずんと胸が沈む。


はっきりとフラれるより、もっと辛い。


好きだと言うことすら許されないことだと言われているような気がしてきて、苦しい。


絶対に想いが届くなんて思ってはいなけれど、これじゃまるで、最初から椎先輩を好きになってはいけなかったんだと言われているみたいだ。


この胸の中で渦巻く気持ちをどうすることもできないまま教室に向かうと、真っ先に紗由から「朝からなんて顔をしてるの」と言われてしまった。


「昨日、どうだった?」


紗由が言っているのは、椎先輩のことだとすぐに分かった。

私はなんて言ったらいいか少し迷って、「言えなかった」と言った。


「え?」

「言えなかったの」


「は?」



驚きのあまりポカンと口を開ける紗由に昨日のいきさつを説明すると、あっけにとられていた顔から次第に眉間にしわが寄って怖い顔になってしまった。

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