君が好きなんて一生言わない。
「わたし言ったよね?先輩にちゃんと言っておいでって。返事したよね?麗?」

「いや本当にその通りなんだけどちょっと話を聞いて」


身にまとうオーラがどんどん黒くなるのを感じながら私が説明し終わると、「ふうん」と紗由は腕組みをしながら相槌を打った。


「先輩、逃げたのね」


どうして、と紗由は呟くけれど私がいちばん知りたいことだった。


先輩が隠そうとしていた過去の私とのつながり。

先輩はどうしてそれを隠そうとしていたんだろう。

なんで知らないふりをしていたんだろう。

椎先輩のことを覚えていないって、出会った時にすぐ気づいていたはずなのに。


考えれば考えるほど、椎先輩についての謎が湧き出してくる。


「それで、麗はどうするの?」


悶々と考えている中で紗由に尋ねられた私は突然のことで反応するのが少し遅れた。


「なにキョトンとしてんの?」と紗由は腕組みをしたまま厳しい視線を私に向ける。


「言おうとした、言えなかった。って、それで終わらせるつもりなの?

麗の気持ちなんて所詮そんなものなの?」


厳しい紗由の言葉の数々に目を見開く。

紗由はいつも優しい言葉をくれた。私を温かく励ますような、そんな言葉。


けれどこれは、決してやさしいだけではなかった。

もっと紗由の中にあるとても強い感情が伝わってくる。


今までにない紗由の行動に私はただ黙って目を見開くしかできなかった。

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